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奥山氏辞職の裏側

先週の朝日新聞の記事より。

「ワンマン」包囲網/民意の在りかは(1)

2009年06月30日

 「マスコミ報道は、実績を一つも評価していない。着々とやっているのに」

 6月18日、仙台市梅原克彦市長(55)の後援会が開いた会合。あいさつに立った支援者の一人は、地下鉄東西線の工事推進、アジア太平洋経済協力会議(APEC)会合の誘致、新型インフルエンザ対策など梅原市長の実績を並べたうえで不満の声をあげた。

 実際、梅原市長をめぐる報道はこの半年、市長によるタクシー券の不適正使用疑惑に染まった。

 くわしい説明を避けて返金や謝罪で幕引きを図るが市議の調査などで新事実が発覚、再び追及を受ける、という流れが続いた。回答を修正するたびに「虚偽答弁だ」との指摘が加わった。

 市議会が問題視したのは、説明責任を果たさない姿勢だった。就任当初からワンマン的な手法を指摘され「市民の声を聞かない」との批判を呼んでいた梅原市長。タクシー券問題の報道が広がるのに呼応する形で、水面下で進んでいた「梅原おろし」の動きが表面化してきた。

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 その中心は藤井黎・前市長時代の市幹部と、自民系のベテラン市議だ。前回の市長選で別々の候補者を支持した2人が手を携えた。白羽の矢が立ったのは、副市長だった奥山恵美子氏(58)。県立高の男女共学化に関する梅原市長の「政治介入」に異を唱える形で、3月に辞職した。

 一連の流れを知る市の関係者は、奥山氏の辞職について「タイミングを見計らっていたのだろう」と冷ややかだ。

 市議会内にも、現職の再選を防ぐために部下を担ぎ出す「内輪」の選挙、という雰囲気が漂う。天下分け目の戦いともされる次期衆院選を前に、政党も独自の候補者を擁立しようという動きは鈍かった。

 自民は、市連の議員を中心に、前回梅原氏を全面的に支持した「足かせ」を抱えていた。一方、政権交代へと弾みをつけたい民主は、当初は他候補を探す流れがあったものの、5月下旬に県連が「先手必勝」を理由に奥山氏支援を表明。6月に入って自民、公明も自主投票を正式に決定。社民も29日に「自主的な応援」の方針を発表し、毎回のように独自候補を擁立してきた共産も「票が割れれば梅原市長が有利になる」と自主投票を示唆する。

 「現職よりは……」との考えが各会派の底流となり、政党間で対立の構図をつくらなかった。その結果、梅原氏と奥山氏以外で立候補を表明したのはこれまでのところ、保守系仙台市議2人にとどまる。

 渡辺博氏(59)は2年前から市長の政治手法に反発し立候補を明言、5月中旬に正式表明した。柳橋邦彦氏(68)は、奥山氏支援に傾く流れが市議会内にできたのに違和感を示し、民間からの擁立活動を5月中旬まで続けた後、自らが立つことにした。

 2人が最後の議会を終えた24日。市議会は約8割の賛成をもって、実質上の「決別宣言」となる梅原市長の問責決議案を可決。29日、奥山氏支援の「市議の会」を5会派、32人で発足させた。

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 現職に反発する世論を、どこまで自分の追い風にできるか。各立候補予定者とも今のところ、探っている状態だ。

 19日、奥山氏はマニフェストの骨子をいち早く発表。だが、東西線工事の推進や市立病院の移転推進などの施策に、報道陣から「梅原市長と差がないのでは」との指摘が飛んだ。奥山氏は「政策の6〜7割は継続させなければ、市政が困惑する」とし、自分らしさを発揮できるポイントを政策立案過程で市民の声を聞く方法、姿勢と強調した。

 「梅原市長以外の候補は『正義の味方』のよう。でも政策上の違いは、なにも見えない」。民間からの候補者擁立を目指したものの、断念したある有権者は指摘する。

 「これからは『市民一筋』。市民の目線に立った、市民本位の政策を進める」。立候補を表明して以来、そんなふうに低姿勢を貫く梅原市長だが、4年間の政策に話が及ぶと「大筋で間違いはない」と自信をのぞかせている。

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 待機児童や少子高齢化、経済の活性化に向けて必要な策は何か――。争点不在の選挙との呼び声が高いなか、「民意の在りか」をすくい上げる選挙戦となるのか。7月12日の告示を前に、市政が抱える課題を探る。(箕田拓太が担当します)